// [ すぴぱら - Alice the magical conductor. ] について

 minoriは、“物語”をお届けして参りました。

 その中で“物語”を、ひとつの「作品」として、より良い形で皆様に贈るべく目指してきたもの ―― 具体的には、グラフィック、音楽、映像、そしてその全てを織り上げる“演出”。それらについて私共は、近作の『ef - a fairy tale of the two.』、『eden*』にて、ひとつの到達点を迎えた、と自負しております。


 そして、時は過ぎ、私たちは新たな挑戦を決意しました。
 それが、minori's 5th debut about "Wonder". 『すぴぱら - Alice the magical conductor.』です。


 本タイトルは、培った演出技術を通し“物語”を描いてきたminoriが、より高次の表現 / 更にはエンタテインメントの持つ力の高みを目指す為の、新たな挑戦作となります。
 そして今回の挑戦が具体的に目標とする表現は、誤解を恐れず、ひとことで言うなら“ 躍動感 "です。

 これまでの作品で、私共が描いてきた“物語”。そこには例えるなら、「映画のスクリーンの中で、ストーリーを彩るキャラクター達とその感情の機微を完全に確立する」事に主眼を置いた演出を施す必要がありました。

 それは“物語を通して、登場人物たちを生かす”という形でひとつの完成を迎え、またそれを目指してminoriの作品は創られていた、と捉える事ができる。『すぴぱら』の制作を開始した現在、私達はそう考えています。


 前作の完成後、これまでの創作を改めて見つめ直した際。上記に対する自己再評価と共に、「エンタテインメントとしてのminori作品が、この先に目指すべき場所」を、おぼろげな形ながらも、確かに見出しました。


 エンタテインメントとは、心を動かすもの。
 そして、心を動かす、感動する、という結果をもたらすアプローチは、ひとつだけではありません。
 その中でminoriがこれまで探求してきたのは、前述の「“ 物語 ”としての世界が、“ 人と心 ”を動かす」感動を最大限に引き出そうというものでした。

 そうした方向から創り出した作品でも、最終的に人が感情を動かされるのは、“ 人と心 ”が織り成す部分に他なりません。
 それなら「“ 人と心 ”が、“ 物語 ”と世界を動かしている」という、ある種、逆のアプローチからのメッセージを、よりストレートに追求 / 表現し、形にできないだろうか。
 そして、それこそが心を動かす、純粋な塊となり得るのではないか。


 これが本作『すぴぱら』で、目指すものです。


 抽象的な表現が多くなってしまいましたが、結局のところ、
「人と、その心から沸き起こる、“ 生きている ” 感覚(“ 躍動感 ”)」を純粋な形で表現する、
 という事に尽きます。

 そして、その活き活きとした、ともすれば触れられるような躍動感を描き出すことで、瑞々しい感情の発露と、登場人物達が「居る」ために綴られて行く“ 物語 ”を、お届けできればと考えております。

 『すぴぱら - Alice the magical conductor.』は言わば、これまで組み立てた創作の方法論を自身で全て解き崩し、その瓦礫の上に築かれる新たな尖塔として、位置づけられた作品です。
 その塔が完成した暁に頂上から見える景色は、以前に登った頂きの別な側面かもしれませんし、全く新しい地平かもしれません。ただ確かなのは「上を目指し続ければ、その場所で自ずと答えは見えるだろう」という事でしょうか。

 ……ちょっと言いすぎたかもしれません。
 しかし私たちはいつだってチャレンジャーなんです。自らの屍を越えていくのが生き様なんです。そう、一度きりしか無い人生、前のめりに行きたいじゃないですか!

 それでは、minori自身の新たな挑戦となる、「純粋な“ 人と心が存在する感動 ”を内包した、躍動するエンタテインメント」作品の誕生に、どうぞご期待ください。

minori スタッフ一同 







// [ すぴぱら ] と“ 躍動感 ”

 『すぴぱら』が目指すものについては上に記載した通りですが、制作にあたって取り入れている具体的な部分を、ご紹介いたします。


 実際に“ ふれ合える ”登場人物たち

 インタラクティブ・ノベルの形態をもつ『すぴぱら』で“ 躍動感 ”を表現するため、大きな目標としたのが、「登場人物たちが手を伸ばせばふれ合える存在感を持ち、活き活きとしている」こと。それにより“ 人物 ”と、その“ 気持ち ”が、動いているのを感じられるでしょう。
 それにはまず、ふたつの感覚の実現が必要なのではないかと考えました。

 // 01 登場人物たちが、ふれ合える距離にいる感覚

 「誰かが存在している事で、物語が動き出している」事を感じて頂くには、どうすればいいか。この問いに対する答えとして採用したのは、“ 登場人物のモデルを、実際に生き、暮らしている人物に求める ”事です。
 例えばインターネット上の動画サイトや掲示板等で、自分の見ている画面にリアルタイムのコメントが追加されたとします。もちろんコメントを書き込んだ相手は、実際には会った事もない、プロフィールも知りえない人物ですが、そこに「生活して、今まさに同じ画面に対して何かを感じている」と思う。そして「画面の向こうの人物」の心の動きを、無意識のうちに考えている。
 これは誰しも経験する事と思いますが、そこには確実に、ある種の「コミュニケーション」が生まれていると言えます。
 そして、こうした「コミュニケーション」こそが、相手の「存在」を感じる、最たるものではないでしょうか。

 幸いにも今回、minoriのアドバイザーでもある猫天商会のゆうなちゃんが、twitterで活きのいい女の子たちを監視していたのを知った私達は、「これだ」と思いました。

 かくして、twitterというコミュニケーションの場にいる女の子達をモデルとし、“ 完全に作り出されたキャラクター ”ではない、実際に“ 生きて、動いていて、ふれ合える ”存在として感じられる人物に、登場してもらう事となりました。
 ( 登場人物については、こちらからご参照頂けます )

 // 02 モニター上で、彼らが活き活きと存在している感覚

 登場人物たちが上記[01]のように決定した時点で、次に実現するべき目標は「その“ 存在感 ”を、いかにモニター上で表現するか」に絞られました。

 ここでは前作までに積み重ねた演出技術のパーツをすくい上げながら、「いかに登場人物の動きを“ 活き活きと ”・“ かわいらしく ”描き出せるか」を検証。従来よく見られた「横 / 縦 (x / y 軸)方向への移動」に加えて、古来より紳士たちの間で「女性の動作の中で、トップクラスにクる」と言われ続けている「振り返る (z軸の概念を入れた、三次元での回転動作)」を導入する試みを行いました。



 これにより、“ 存在する人物 ”としての立体感を伝える第一歩を踏み出したのです。アニメーション等では、こうした描写はままあるのですが、いわゆるアドベンチャー形式のゲーム等では平面的演出になりがちだった部分に、新鮮な感触をもたらせるのでは、と考えます。
 動画でご覧いただければ一番いいとは思うのですが、今はこれが精一杯。可能なら、また後日にでも何とかしてみたいです。

 また上記の応用にもあたるのですが、複数の人物が画面上にいるシーンにも、より距離感 / 会話の空気を感じられる演出を導入いたしました。



 上の画像は視点となる人物を含め、3人で会話をしている場面です。タイミングごとに話している相手の方を振り向いたり、会話とは関係無く他の方向を見たりする事で、「彼らの心情の変化」や、「彼らのいる世界を切り取っているモニター範囲の外で起きている事象」を表現する事が可能です。古(いにしえ)より、紳士たちの間でもてはやされる「皆で話してるのに、その子だけ不意にコチラに視線を移し、イタズラっぽく微笑む」等の描写だってできる訳です。
 動画でご覧いただければ一番いいとは思うのですが、今はこれが精一杯。可能なら、また後日にでも何とかしてみたいです。



 また、これまでの作品でご好評頂いておりました、“ 歩きスクロール ”シーンも強化。今回は背景、キャラクター本体、目パチ、口パク、髪の毛の動き、そして光源等の効果処理をリアルタイム合成し、更なる進化を遂げています。
 一度、創作過程のすべてを解体し、再構築をする過程においても、いいものは使います。

 また、このスクロール演出部分が最もマシンパワーを必要とする為、少々旧仕様のPC構成では、重く感じられる場合もあるかと思います。ですが現状で最高のクオリティを目指すのは、エンタテインメントの制作としては当然の姿勢かと考えております。現に、最新のスペックを持つコンピューターをお使いの皆さんがいらっしゃる訳で、その方々に「低いスペックでも動くように、演出効果をショボく抑えちゃいました♪ テヘペロ」とは、やはり申し上げる事はできません。こうしたPC等のテクノロジーは、かなりの速度で高機能化 / 安価化が進むものです。そんな中で、後ろを見ていては、面白い事はできないものです。「世の中が後から付いてくるさ!」と生意気な事を申し上げるつもりは毛頭ございませんが、よろしくお願いいたします。


 以上、長くなってしまいましたが、現在導入している新規 / 強化演出の一部をご紹介差し上げました。
 一番大切な「人物の躍動感を、活き活きと感じられる」描写を目指し、効果的な手法があれば、更に新しい表現を取り入れていく予定です。ご期待頂ければ幸いです。





// [ すぴぱら - Alice the magical conductor. ] シリーズのリリースについて

 

 ここまで作品の概要の紹介をして参りましたが、最後に本作のリリース形態について、お知らせ差し上げます。

 本タイトル『すぴぱら - Alice the magical conductor.』については、1パッケージでの完結リリースではなく、それぞれ幾つかのエピソード毎をまとめたパッケージの、逐次リリースを予定しております。

 これは、ご興味のあるエピソードについてのみでも気軽にお求め頂ける、言わば“ シリーズものでも、それぞれ別な特色のある独立のお話が展開するライトノベル ”の感覚に近いものにしたかった、というのが主な理由となります。

 そして、そのリリースの第1弾となる [ すぴぱら - Alice the magical conductor. STORY #01 ](仮) のリリースを、2012年 5月 18日に予定しております。その他のエピソードについても、逐次お知らせ / リリースできればと思っております。

 これから始まる [ すぴぱら ] という世界の始まりを、私共minoriと共に感じ、お楽しみ頂ければ大変光栄に存じます。