_ プロローグ




 物心ついた頃から、人の感情が読めてしまう少年、宮坂 終
 特に人の多い場所―― たとえば、満員電車では大勢の感情が流れ込んできてしまう。
 それは苦痛でしかなかった。

 そんなある日、終は同じ車両に乗っている一人の少女を見つける。

「あれ?」

 彼女の感情は流れて来ない。

「彼女にだけ意識を集中していれば、他の乗客の感情は流れ込んでこないはず…… 」

 しかし、やはり何も感じないままだった。
 何度もすれ違う不思議な少女。
 いつしか、終は彼女だけを見つめ続けるようになっていた。


 だが、同じ学校の生徒なのに名前すら知らない。

「いったい、彼女は…… 」

 そして、彼女の心を知りたいと思うようになっていく――
 ある夏の日、少女は教室へ向かわず屋上への階段を上がっていった。

「どうしたんだろう?」

 終は追いかける。

 屋上へ上がると、少女は冷たい目でこちらをみつめていた。

「あの…… 」

 少女に声を掛けようとしたその時、遮るように言葉が発せられた。


「私の心には壁があるの。あなたには越えられない」と――


 少女は、終の能力に気づいていたのだ。


 感情を読める少年と、心に壁を持つ少女。
 ふたりの、ひと夏の思い出は、ここから始まった――。







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